有価証券報告書には、会社自身が「事業を続けられるか疑わしい事情がある」と書く欄があります (継続企業の前提に関する注記)。Corpusは 記載のある会社の一覧を出していますが、 それが何を意味するのかは書いていませんでした。 同じ会社の3期ぶんの記載が手元にあるので、ついた次の期に何が起きたかを数えます。
注記がついた翌期に記載が消えたのは12.3%だけで、 77.4%はそのまま注記が続きます。 さらに、最初の期に注記があった会社では、その後2年で 従業員数の中央値が-9.7%動いています (記載が無い会社は+3.0%)。 平均年収は+3.4%と世間並みに上がっているので、 給料が下がったのではなく、人が減っています。
同じ会社の連続する2期を7,630組つくり、前の期の記載レベルごとに 次の期の内訳を数えました。
| 前の期 | 組数 | → 記載なし | → 重要事象 | → 注記あり |
|---|---|---|---|---|
| 記載なし | 7,293 | 98.9% | 0.9% | 0.2% |
| 重要事象の記載 | 231 | 23.8% | 68.8% | 7.4% |
| 注記あり | 106 | 12.3% | 10.4% | 77.4% |
記載が無い会社が翌期も無いのは98.9%で、ほとんど動きません。 一方、重要事象の記載がある会社の7.4%は翌期に注記へ進み、 23.8%が記載なしに戻ります。 「重要事象」は注記の一歩手前で、そこからどちらにも行きます。
最初の期の記載レベルで分け、そこから2年の従業員数(連結)と 平均年収の変化の中央値を出しました。
| 最初の期の記載 | 社数 | 最新期に記載なし | 従業員数の変化 | 平均年収の変化 |
|---|---|---|---|---|
| 記載なし | 3,599 | 98.2% | +3.0% | +5.7% |
| 重要事象の記載 | 117 | 37.6% | -5.3% | +5.6% |
| 注記あり | 47 | 21.3% | -9.7% | +3.4% |
従業員数の差がはっきり出ます(記載なし+3.0% に対して 注記あり-9.7%)。平均年収はどの組でも上がっていて、 この2年の賃上げは記載の有無に関係なく起きていました。 ただし平均年収は「残った人」の平均なので、給料の低い人が先に辞めれば 人が減りながら平均が上がることもあります。この数字だけでは区別できません。
| 業種 | 社数 | 記載のある会社 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 医薬品 | 81 | 19 | 23.5% |
| 繊維製品 | 46 | 7 | 15.2% |
| 小売業 | 328 | 41 | 12.5% |
| 非鉄金属 | 33 | 4 | 12.1% |
| 精密機器 | 52 | 5 | 9.6% |
| 情報・通信業 | 618 | 48 | 7.8% |
| 化学 | 199 | 4 | 2.0% |
| 陸運業 | 61 | 1 | 1.6% |
| 不動産業 | 132 | 2 | 1.5% |
| 鉄鋼 | 38 | 0 | 0.0% |
| 銀行業 | 83 | 0 | 0.0% |
上位6業種と下位5業種(30社以上の業種のみ)。 医薬品が23.5%と際立って高いのは、 売上が立つ前の創薬企業が多く含まれるためと考えられます (開発に長い年月がかかり、その間は資金調達で持たせる業態です)。 鉄鋼・銀行業は0%でした。記載の有無は業態の性質を強く映します。
連結従業員数の中央値は、記載なしが748人、 重要事象が153人、注記ありが68人。 記載のある会社は規模がひと桁小さいことになります。 上の「人が減っている」も、母数が小さいぶん1件の増減が効きやすい点は割り引いて読む必要があります。
出典: 有価証券報告書(EDINET・金融庁)。4,083社の記載を
2026-08-08時点で集計。集計手順は pipeline/analyze_gc.py、
全数値は pipeline/out/research_gc.json にあります。
記載のある会社の一覧は継続企業の前提へ。
ほかの検証: 社員の増減と株価・
平均年収の上昇の中身・
女性管理職と男女の賃金差・
訂正報告書と経営の兆候。