「女性管理職比率を上げれば男女の賃金差も縮まる」は、施策の前提として よく置かれます。どちらも有価証券報告書に載る数字なので、そのまま確かめられます。
女性管理職比率が最も低い層(中央値2.5%)と最も高い層 (同27.8%)を比べると、管理職比率は11倍ちがうのに、 賃金差は68.2%→72.0%と3.8ポイントしか動きません。 順位相関は素で+0.130、業種を中和しても+0.192。 向きは期待どおりですが、「管理職を増やせば差が消える」と言える大きさではありません。
ここでの男女賃金差異は「女性の平均賃金が男性の何%か」です。 100%で同水準、数字が大きいほど差が小さい。全上場の中央値は70.3%、 女性管理職比率の中央値は8.9%です。
| 分位 | 社数 | 女性管理職比率 (中央値) | 男女賃金差異 (中央値) |
平均年齢 | 平均勤続 |
|---|---|---|---|---|---|
| Q1 | 491 | 2.5% | 68.2% | 42.0歳 | 15.8年 |
| Q2 | 492 | 5.1% | 69.8% | 42.3歳 | 15.9年 |
| Q3 | 492 | 8.9% | 71.3% | 41.9歳 | 14.7年 |
| Q4 | 492 | 14.6% | 70.2% | 40.7歳 | 11.3年 |
| Q5 | 492 | 27.8% | 72.0% | 39.1歳 | 7.5年 |
見落とせないのは右の2列です。女性管理職比率が高い層ほど 平均年齢が若く(42.0歳→39.1歳)、勤続も短い (15.8年→7.5年)。年功で開く差が小さい会社が上位に来ているだけ、 という説明が成り立ちます。管理職登用そのものの効果とは切り分けられません。
業種構成に引きずられている可能性があるので、 同じ業種の中での順位に置き換えて測り直しました(2,448社)。 相関は+0.130→+0.192とむしろ少し強くなります—— 業種のちがいがこの関係を隠していたということです。それでも弱い水準にとどまります。
平均年齢を揃えた場合も見ました。どの年齢帯でも符号は同じで、大きさも変わりません。
| 年齢帯 | 社数 | 順位相関 |
|---|---|---|
| 平均年齢 35.6歳前後 | 491 | +0.110 |
| 平均年齢 39.7歳前後 | 491 | +0.050 |
| 平均年齢 41.4歳前後 | 492 | +0.128 |
| 平均年齢 43.1歳前後 | 491 | +0.147 |
| 平均年齢 45.6歳前後 | 492 | +0.096 |
個社の管理職比率より、どの業種にいるかのほうが賃金差をよく説明します。 10社以上ある業種のうち、上下それぞれ6業種です。 数字が大きいほど差が小さいことに注意してください。
| 業種 | 社数 | 女性管理職比率 | 男女賃金差異 |
|---|---|---|---|
| 差が小さい(女性の賃金が男性に近い)業種 | |||
| 情報・通信業 | 313 | 13.6% | 76.5% |
| 鉄鋼 | 28 | 2.9% | 75.3% |
| 化学 | 157 | 6.6% | 74.2% |
| 輸送用機器 | 68 | 3.9% | 74.0% |
| 医薬品 | 42 | 16.4% | 73.8% |
| ゴム製品 | 15 | 4.2% | 73.1% |
| 差が大きい業種 | |||
| 建設業 | 106 | 3.2% | 65.4% |
| パルプ・紙 | 20 | 5.0% | 64.9% |
| 卸売業 | 188 | 7.6% | 64.6% |
| 不動産業 | 62 | 12.2% | 64.3% |
| 小売業 | 230 | 12.6% | 64.2% |
| 銀行業 | 60 | 15.3% | 53.6% |
銀行業が53.6%と際立って差が大きいのは、 一般職・総合職の区分が長く残った歴史と、事務職の女性比率の高さが効いていると考えられます (この推測はデータからは確かめていません)。
出典: 有価証券報告書(EDINET・金融庁)。集計は当サイトによるもので、 金融庁が提供・保証するものではありません。 もう1本の検証: 社員の増減は、その後の株価と関係があるか。 算出方法はこちら。