女性管理職を増やせば、男女の賃金差は縮まるのか

上場2,459社の提出書類で確かめた

「女性管理職比率を上げれば男女の賃金差も縮まる」は、施策の前提として よく置かれます。どちらも有価証券報告書に載る数字なので、そのまま確かめられます。

結果: 関係はある。ただし驚くほど弱い

女性管理職比率が最も低い層(中央値2.5%)と最も高い層 (同27.8%)を比べると、管理職比率は11倍ちがうのに、 賃金差は68.2%→72.0%と3.8ポイントしか動きません。 順位相関は素で+0.130、業種を中和しても+0.192。 向きは期待どおりですが、「管理職を増やせば差が消える」と言える大きさではありません

読み方

ここでの男女賃金差異は「女性の平均賃金が男性の何%か」です。 100%で同水準、数字が大きいほど差が小さい。全上場の中央値は70.3%、 女性管理職比率の中央値は8.9%です。

女性管理職比率の5分位で見る

分位社数 女性管理職比率
(中央値)
男女賃金差異
(中央値)
平均年齢平均勤続
Q14912.5%68.2%42.0歳15.8年
Q24925.1%69.8%42.3歳15.9年
Q34928.9%71.3%41.9歳14.7年
Q449214.6%70.2%40.7歳11.3年
Q549227.8%72.0%39.1歳7.5年

見落とせないのは右の2列です。女性管理職比率が高い層ほど 平均年齢が若く(42.0歳→39.1歳)、勤続も短い (15.8年→7.5年)。年功で開く差が小さい会社が上位に来ているだけ、 という説明が成り立ちます。管理職登用そのものの効果とは切り分けられません。

業種を中和しても、年齢を揃えても、弱いまま

業種構成に引きずられている可能性があるので、 同じ業種の中での順位に置き換えて測り直しました(2,448社)。 相関は+0.130→+0.192とむしろ少し強くなります—— 業種のちがいがこの関係を隠していたということです。それでも弱い水準にとどまります。

平均年齢を揃えた場合も見ました。どの年齢帯でも符号は同じで、大きさも変わりません。

年齢帯社数 順位相関
平均年齢 35.6歳前後491+0.110
平均年齢 39.7歳前後491+0.050
平均年齢 41.4歳前後492+0.128
平均年齢 43.1歳前後491+0.147
平均年齢 45.6歳前後492+0.096

業種による差のほうが大きい

個社の管理職比率より、どの業種にいるかのほうが賃金差をよく説明します。 10社以上ある業種のうち、上下それぞれ6業種です。 数字が大きいほど差が小さいことに注意してください。

業種社数 女性管理職比率男女賃金差異
差が小さい(女性の賃金が男性に近い)業種
情報・通信業31313.6%76.5%
鉄鋼282.9%75.3%
化学1576.6%74.2%
輸送用機器683.9%74.0%
医薬品4216.4%73.8%
ゴム製品154.2%73.1%
差が大きい業種
建設業1063.2%65.4%
パルプ・紙205.0%64.9%
卸売業1887.6%64.6%
不動産業6212.2%64.3%
小売業23012.6%64.2%
銀行業6015.3%53.6%

銀行業が53.6%と際立って差が大きいのは、 一般職・総合職の区分が長く残った歴史と、事務職の女性比率の高さが効いていると考えられます (この推測はデータからは確かめていません)。

この検証の限界

出典: 有価証券報告書(EDINET・金融庁)。集計は当サイトによるもので、 金融庁が提供・保証するものではありません。 もう1本の検証: 社員の増減は、その後の株価と関係があるか。 算出方法はこちら