生涯年収のランキングは、平均年収のランキングとどれだけ違うか

上場3,780社で確かめた

Corpusは生涯手取りのランキングを出しています。 その説明に「額面の順位と手取りの順位は、累進課税と年齢補正で入れ替わる」と書きました。 本当にそうなのか、どちらがどれだけ効いているのかを測ります。 結果は「累進課税はほとんど順位を変えていない」——自分の書いた説明が正確ではありませんでした。

100位より大きく動く会社
76.4%
3,780社中 2,888社
税で動く順位
2
額面→手取りのずれ(中央値)
年齢補正で動く順位
191
平均年収→額面のずれ(中央値)
手取り率の幅
62–80%
いちばん低い会社といちばん高い会社

順位はたしかに動く

平均年収で並べたときの順位と、生涯手取りで並べたときの順位を比べます。

順位の動き社数割合
10位より大きく動く3,62295.8%
50位より大きく動く3,26986.5%
100位より大きく動く2,88876.4%
300位より大きく動く1,15130.4%
500位より大きく動く63116.7%

3,780社のうち76.4%が 100位より大きく動きます。平均年収のランキングと生涯手取りのランキングは、別物と言っていい程度には違います。

動かしているのは税ではない

「平均年収 → 生涯年収(額面)」と「生涯年収(額面) → 生涯手取り」に分けて測ります。 前者は年齢補正だけの効果、後者は税と社会保険料だけの効果です。

比べるもの順位相関順位のずれ(中央値)
平均年収 → 生涯年収(額面)0.927191位
生涯年収(額面) → 生涯手取り1.0002位
平均年収 → 生涯手取り0.926192位

額面から手取りに変えても、順位はほとんど動きません (順位相関1.000・ずれの中央値2位)。 一方、平均年収から生涯年収(額面)に変えると191位動きます。 入れ替わりのほぼ全部が年齢補正で説明でき、税の寄与はごくわずかでした。

累進課税は効いている。ただし順位は変えない

税が効いていないわけではありません。手取り率は年収が上がるほど下がります。

平均年収社数手取り率の中央値
0万円以上400万円未満6478.8%
400万円以上600万円未満1,24977.4%
600万円以上800万円未満1,66475.7%
800万円以上1,000万円未満55973.5%
1,000万円以上1,500万円未満21671.7%
1,500万円以上2866.3%

手取り率は61.5%から79.5%まで開きます。 それでも順位が変わらないのは、この関係が単調だからです。 年収が高い会社ほど手取り率は低いものの、順位が入れ替わるほどの逆転は起きません。 「累進課税で順位が変わる」は、効果の向きは合っていても結論として間違いでした。

では何が動かしているのか——平均年齢

生涯年収の推計は、業種の年齢別賃金カーブを各社の平均年収に合わせて按分します。 同じ平均年収でも、平均年齢が若い会社ほど按分の倍率が大きくなり、生涯では高く出ます。

平均年齢社数順位の動き(中央値)
0歳以上32歳未満111+751位
32歳以上38歳未満669+332位
38歳以上42歳未満1,252−18位
42歳以上46歳未満1,242−172位
46歳以上52歳未満437−411位
52歳以上69−300位

平均年齢32歳未満の会社は中央値で+751位上がり、 46〜52歳の会社は-411位下がります。 按分の倍率は中央値1.15倍、上位5%で1.66倍まで開きます。

この推計は初任給の実データと合うか

補正後の22〜24歳は業種の水準そのものです(会社ごとの上乗せは22歳では0)。 その業種の水準が、別の統計表である「新規学卒者の所定内給与額」と合うかを確かめました。 賞与はこのサイトの前提どおり年収の19%として年収に直しています。

3,780社ぶんで比べると、 推計は初任給の実データの0.90〜1.14倍(中央値0.98倍)に収まりました。 補正前は中央値1.16倍・最大5.26倍だったので、明確に良くなっています。

ただし、これで検証できたのは「2つの統計表が整合すること」までです。 補正後の22歳は定義上ちょうど業種水準なので、22歳から平均年齢までをどうつなぐかの 妥当性は、この検算では確かめられません。そこは依然としてこちらが置いた前提です。

この検証の限界

出典: 有価証券報告書(EDINET・金融庁)/賃金構造基本統計調査2023(e-Stat)。 集計は当サイトによるもので、各府省が提供・保証するものではありません。 全3,780社の数字はCSVで配っています。 ランキングは生涯手取り、 手取りの計算は手取り計算機へ。 ほかの検証: 平均年収が上がった会社では何が起きていたのか